(この文章は、このHPを開設した2012年当時に書いたものです。)
第1回では、「不安」の流れ。
そして、保育所から中学校までの各段階での「保護者支援」のテーマをご紹介しました。
今回も、第1回の内容にからめて、お送りしたいと思います。
第2回のテーマは、「園生活の中で、気になる子」や「発達面で気になる子」の保護者に対して、
どのような対応をしたらよいかについて、ふれてみたいと思います。
よく、保育相談の研修や先生からのご相談の中で、質問される内容があります。
それは、「保護者がこどもの気になる点を受け入れてくれない。」や「発達面での障がいについて、
受け止めてくれない。」 そんな時にどう伝えたらよいか? という質問をよくお受けします。
「どうやったら 受け入れてくれるのか?」
「どうやったら 認めてくれるのか?」
まずは、その点について ご説明したいと思います。
まずは、第1回目でも 紹介した 「不安」の流れを もう一度みてください。
この「不安」の流れには、「不安」を受け止めることができるための条件が、 実は存在します。
それは、上の図にも あるように、それぞれの経験が 十分満たされると 受け入れること、
受け止めることができる のです。
「同じ」という経験が満たされると、次の「違い」というものを 受け入れることができます。
この「同じ」という経験が、十分満たされていないのなら、「違い」は受け入れられません。
次も同じです。「違い」という経験が十分に満たされたならば、次の「離れ」を受け止めることができます。
ここでも、同じように、「違い」という経験が、十分満たされていないのなら、もちろん、「離れ」は受け入れることができません。
それぞれのステップが、十分満たされることで、次のステップを受け入れることができるのです。
では、もう一度、保育所から中学校までの各段階の「保護者支援」のテーマを見てください。
ここでも、同じことが言えます。
保育所や幼稚園で、十分に「同じ」という経験が満たされると、小学校での「違い」は、受け入れることができます。
そして、小学校時代にたくさんの「違い」を経験することで、中学校での「離れ」も受け入れることができるのです。
それぞれの段階で、この「同じ」→「違い」→「離れ」を十分に経験していけば、この「不安」も受け入れることが、
実は可能なのです。
では、ここで、気になる子や発達面で障がいがある可能性のある子の「保護者」の思いをみてください。
どうですか?
本来であれば、「同じ」→「違い」→「離れ」という「不安」の流れがゆっくりとした時間で流れていくのです。
保育所→小学校→中学校といった段階を時間をかけて進んでいくことで、この「不安」を受け入れることが
できるのですが、もし、保育所時代に、こどもが他の子と違う、何か障がいがあると告げられると、保護者
の中では、一気にこの「違い」と「離れ」もやってくるのです。
「この子は、どうして 他の子と違うのだろうか・・・」
「もしかしたら、他の子とは別の学校に行かなければならないのかも・・」
そうした「違い」への「不安」と、「離れ」への「不安」が 一度にやってくるのです。
これでは、「受け入れられない」「受け止められない」のは当然です。
それぞれの段階が十分に満たされていないのに、受け入れられるはずはないのです。
最初にご紹介しました、先生からの質問にあった、「どうして受け入れてくれない。」
「どうして受け止めてくれない」は、受け止められないことの方が当然なのです。
実は、それが自然なのです。
逆に、すんなりと受け入れられたり、受け止められる方が 少し心配です。
それは、保護者が、無理をされているかもしれないからです。
保護者は、「同じ」という経験も満たされていない状況で、「違い」や「離れ」の不安を抱えてしまいます。
そのため、それをなんとか受け止められるように、「同じ」をまず満たそうと考えます。
それが、「同じ」状況のお子さんを持つ親の会に参加したり、ネットやサークルなどで、「同じ」思いを共有できる
仲間を探すことで、 「同じ」という経験を満たして、次のステップに進もうと努力されているのです。
保育所での、「園生活で気になる子」や「発達面で気になる子」の「保護者」への支援は
その「違い」を説明することではありません。
「同じ」を満たす、「同じ」を体験できる支援を行うことが 最も重要なのです。
この「同じ」を体験できるサポートを 研修では、ご紹介しています。 (げんき)
次の第3回では、少し こどもたちの支援についても触れてみたいと思います。
第3回は、「発達面で気になる子をサポートする際の視点」です。(げんき)