虐待の疑いのある場合の支援
(第4回)

(この文章は、このHPを開設した2012年当時に書いたものです。)

第4回

③虐待の可能性が疑われる保護者への支援

保育者は、虐待が疑われる場合には、行政もしくは児童相談所に通報の義務があります。

「虐待かどうか」を保育者が「特定」する必要はありません。

「事実」の検証は、関係機関の連携の中で行っていきます。

 

しかし、「通報することで保護者との関係が悪くならないか・・・」そんな心配も多いはずです。

 

ここでは 虐待の可能性が疑われるこども・保護者への支援をまとめてみました。

 


役割を知ることが大切なのです。

虐待かどうかを「調査し判断する」のは、市町村の担当課や児童相談所の仕事です。保育者の役割は、最もこどもと接している機会が多いため、「気づくこと」が重要な役目となります。

しかし、「気づく」といっても なかなかそこは難しいものです。小さな「気づき」を見逃して、あとあと大きな事件や事故につながることもあります。「気づき方」(発見の仕方)は、またあらためてご紹介したいと思います。ここでは、「通報後の保護者対応のポイント」を3つまとめてご紹介したいと思います。 (げんき)


理解しておきたい3つのポイント

通報した後のこどもと保護者への対応

虐待ケースに関しては、様々なケースに立ち会ってきました。また、児童養護施設にいたため、虐待を受けたこどもたちとも生活を共にしてきました。「虐待」については、この1ページだけで、とてもご紹介することができないので、細かな部分は今回まとめずに、園でできること(やってほしいこと)を3つにまとめました。(げんき)

①常にこどもと保護者の「味方」であるというメッセージが大切

「通報したことで保護者との関係が悪くならないだろうか」。研修の際にも、必ず質問を頂く内容です。

虐待の疑いのある保護者は、ほとんどの場合、本人にその意識はありません。「しつけ」の一環だとおっしゃる方が多く、問題意識や自覚がない場合がほとんどです。そうした方からすれば、「通報」されたことをよく思わないこともあるかと思います。ここで大切なことを再度確認します。「通報」=チクリ。「通報」=犯罪、事件 ではないのです。おそらく、この「通報」という言葉のイメージがそうさせているのだと思いますが、何かしらの「罪悪感」を生む言葉です。

 

なぜ連絡するのか?  それは もちろん、生命を守るという大きな目的がありますが、もっと現実的に伝えるとすると、「幼児期のこころのダメージは大人まで残る」からなのです。大げさではなく、その後の「この子の人生」を大きく左右してしまうからです。深く深く こころの一番深いところに残ってしまうのです。

 

保育者は、こどもたちに 幸せに成長して欲しい、そしてこどもたちだけでなく ご家族にも幸せに過ごして欲しいという願いを持っています。虐待の可能性を連絡するというのは、そうした想いがあるということを 発信し続けることが大切なことなんだと いつも感じています。 (げんき)

 

②気づいてあげられず ごめんなさいという想い

 ~ こどもにも 保護者にも ~

「もっと早く気づいてあげればよかったね・・ごめんね」

その想いを虐待の疑いのあるこどもに、きっと抱くはずです。

 

できれば、その「想い」を保護者にも持ってあげたいものです。

「そんなに子育てが大変だったんですね、、、もう少しその大変さを気づいてあげればよかったです、、ごめんなさいね」そうした思いを持つが大切です。

「あんなひどい親にそんな思いなんか持てません」「虐待したんですよ、あの親は!」。そうした気持ちになるのもとてもよくわかります。でも、忘れてはならない大切なことは、相手がどんなひどい親であったとしても、どこかで支援の手を伸ばすチャンスは必ずあったのです。そこに気づいてあげられなかったことは、是非伝えて欲しいと思います。

「虐待したこと」と「気づいてあげられなかったこと」 これはまた別の問題だからです。 (げんき)

 

③園でお手伝いできることは 何かありませんか?

「虐待をやめさせる」手伝いを関係機関は全体で行わなければなりません。

 

児童相談所や市町村や医療機関であれば、保護者のメンタル面での支援や福祉的なサポートを実施し、「虐待をしない」ためのお手伝いを行います。では、園では何ができるでしょうか?

きっと、何かお手伝いできることはあるはずです。ちょっとしたことでもいいのです。小さなことでいいのです。その小さな助けこそ、積み上げていくことで、大きな力を発揮するのです。虐待のケース会議にソーシャルワーカーとして参加させていただくことも多いのですが、「虐待」の内容について批判的な意見が出ることはしばしばですが、「私のところでは、こんな支援をします」という前向きな保護者への手伝いの内容が出ることが あまりないのが非情に残念なところです。

「なにができるのか」を考えること。それは「助けたい」という意思の表れなのです。(げんき)

 

 


いよいよ最終回、第5回は こちらから