「潜在保育士が現場に戻らない理由は、給与の低さである」
多くの調査で、そう示されています。
そして実際に、待遇改善に取り組む自治体や園も増えています。
これはとても大切な動きです。
しかし、その一方で
給与を上げても、戻らない人がいる
という現実もまた、存在しています。
なぜでしょうか。
■ 「給与」は、語られやすい理由である
潜在保育士の方に話を聞くと、最初に出てくるのは
「給料が見合っていない」
という言葉です。
もちろん、それは本音です。
ただ、その言葉の奥には、もう一つの本音が隠れていることがあります。
・人間関係で傷ついた経験
・否定され続けた記憶
・感情を出せなかった日々
こうした体験は、とても個人的で、言葉にしにくいものです。
だからこそ
「給与」という共有しやすい言葉で語られている。
この視点を、僕たちは持つ必要があります。
■ 本当の離脱は、もっと前に始まっている
現場を離れるプロセスは、ある日突然ではありません。
多くの場合、それは静かに始まっています。
感情を抑える
↓
我慢が続く
↓
こころがすり減る
↓
余裕がなくなる
↓
「もう無理」と感じる
そして最後に
「この給料では続けられない」と判断する
つまり、給与は「最後の判断材料」であり、
その前に「こころの限界」が存在している
ということです。
■ 給与改善だけでは、なぜ足りないのか
もし本当に給与だけが問題であれば、
待遇が改善されれば、多くの保育士が戻るはずです。
しかし現実には
・条件が良くても戻らない
・一度戻っても再び離れる
・別の園でも同じ理由で辞める
こうしたケースが少なくありません。
これは
問題が構造的であり、心理的である
ことを示しています。
■ 潜在保育士が本当に求めているもの
では、何があれば戻れるのでしょうか。
多くの声を整理すると、
共通しているのは「安心して働けるかどうか」です。
・弱音を言ってもいい
・失敗しても否定されない
・感情を持っていていい
こうした環境があるかどうか。
これは待遇表には載らない要素ですが、
働き続けるうえで非常に重要な土台です。
■ 園や行政に求められる視点の転換
これから必要なのは
「条件を整える」から「状態を整える」への転換
給与や制度といった外側の整備に加えて、
・心理的安全性のある組織づくり
・感情を扱えるマネジメント
・「休むこと」への理解
といった「内側の環境」へのアプローチが不可欠です。
■ 潜在保育士の声を、代弁するなら
最後に、現場を離れた方々の思いを、あえて言葉にするなら
「子どもは好きなんです。
でも、あの環境に戻るのが怖いんです。」
「頑張れなかった自分が悪いと思っていました。
でも、本当はもう限界だったんです。」
「給料も大事です。
でも、それ以上に「安心して働けるか」が大事なんです。」
■ 結び
給与は大切です。
それは間違いありません。
しかし「それだけでは、人は戻らない」
僕たちが本当に向き合うべきは
「こころが整った状態で働けるかどうか」
という視点ではないでしょうか。
保育という、人のこころに深く関わる仕事だからこそ
そこに関わる大人のこころが、
守られていることを願っています。
(げんき)
【次の記事は、具体的な対策です。】
園長先生へ 保育士の離職を防ぐために、明日からできる5つのこと 〜「こころが整う職場」をつくる実践ガイド〜
【執筆者プロフィール】
岸本 元気|感情開放療法セラピスト
(保育士・精神保健福祉士)
「感情のブロック」を解き放つ「感情開放のスペシャリスト」
福岡にある、相談支援機関「親と子のメンタルヘルス研究所」所長。
メンタル不調を抱える保護者や保育者に特化した感情開放療法セラピストとして活動。不安を開放するだけでなく「人生そのもの」を大きく前進させることを目的とした「人生の流れを変える感情のスペシャリスト」。年間120本を超える全国での講演・研修は、エンターテイメントで培った「こころに響くことば」と、専門職としての「確かな知見」が融合した唯一無二の内容として知られる。 詳しいプロフィールは、こちら
